命を救う服も有る。
死にそうに生きていた。
私から見ると彼女は精神を保つのがやっとの状態だった、
繊細で不安定で吐き出せない怒りを自分の中に溜めて。
それも仕方なかった。
彼女は私が出会う数ヶ月前に最愛の人を医療過誤で亡くしていた。
そんな彼女を私のクライアントさんで有るスタイリストさんからご紹介頂いた。
Takakoさんの服がとても似合いそうな知的な子がいるの。と。
彼女はとても知的で初々しい美しさと不安定さを併せ持つ女性だった。
そしてとても良い子だった。
でも生きているのが当たり前だけど 本当に苦しそうだった。
見ているこっちが切なくなる位。
彼女を何とかしたかった。
私に出来る事は服と、そして私の底抜けの前向きさで彼女を見守る事だけだった。
そんな中。
彼女からある打診を受けた。
最愛の人の遺品で有るスーツをリメイクして貰えないかと。
そしてそこに 彼女のお祖母様がそんなに裕福ではなかったけれど一所懸命お金を貯めて買った帯を、お祖母様の形見として受け継いだからコートに取り込めないかと。
正直悩んだ。
うちはサイズダウンのお直し屋さんでは無い。
そして私がデザインした服を売るBrandで有り
"貴方の好きなデザインをつくりますよ"という仕立て屋さんでは無い。
かつ。一人のテイラーさんには"自信がない"と断られた。もう一人の方も"mmmmm
""やったコトは無いし そんなに大事な物を完璧に仕上げられるかどうか"と。
でも。私には彼女の気持ちが痛いくらい解った。
このcoatが有れば、着られれば、彼女は彼に護られて生きていける。 そんな気分に成れるのだ。
tailorさんは最終的に"想い"を組んで 受けて下さった。
そのコートが上がって来た。
彼女からのMailを受けて、私は泣けてきた。
彼女に叉"命"が戻った、と思った。
そして もう大丈夫。
と思った。
服で。
人の命を救えるコトも 本当に有るのだ。
この仕事は、私の天職だ。
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